!!いやいや、完全に好みの問題ですが、好きな人ごめんなさい。
「灼熱の魂」「プリズナーズ」そして大好き「複製された男」と世のタブー(人として、そして男として)を描いてきた最も最新作を期待されている監督と思います。(2016年当時)
その彼が無情の麻薬カルテルとの攻防を描くという。なるほど。
主演は「オール・ユー・ニード・イズ・キル」でトム・クルーズを何度も殺したエミリー・ブラント。共演はジョッシュ・ゲス・ブローリン、とベニチオ・どゲス・デル・トロ。
最近は、邦題のダメさは、作品のダメさに比例する、とまで思うようになってましたが、配給会社も本気で後世に残す映画は、邦題も多少集客度外視でも、マジめに考えること思うのですが。
いや、本作を「ボーダーライン」と名付け、その理由を正義と悪の、あるいは国境の、と勝手にテーマを決めつけることを親切、と思う人はそれでもいいかもしれません。
意味は暗殺者。つまりは一人の男の話。「一人の男の意思」にそして一人の女捜査官が、そして悪も正義も国境もないそんな世界が、振り回される話。
だが、己の正義感に強い女捜査官が、その世界で打ちのめされる映画は数多くあるし、その姿をドラマチックに描いた「ゼロ・ダーク・サーティ」という決定打があります。
本作、「ゼロ・ダーク・サーティ」の持つ、圧倒的な「映画的」緊張感には及ばない。

演出が、この世界の「設定」に甘えている、とは言い過ぎでしょうか。
また、麻薬カルテルの話でいうなら、リドリー・スコットの大傑作「悪の法則」で淡々と、だがドラマチックにその恐怖をきっちりと描き切っています。

ほかにも、無情の世界を生きる、その生き様を悲しくも美しい男を描いた「ディーパンの闘い」という傑作もあります。

ドゥニ・ビルヌーブはタブーのドラマを描くことで、脚光を浴びたわけですが、「複製された男」で世間的には株を下げ(もちろん、僕はこの映画大好き)、再び「人」としての、「正義と悪」「人とモラル」のタブーの映画に戻ってきたわけだが、本作でちょっとこの監督に対して、映画的マジックを過剰に期待しすぎたかなあという結論。

ゲス2人もそのこれまでのキャリアの「ゲス」っぷりからすると、全然物足りない(汗)。
劇場公開日 2016年4月9日
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