「クリード 炎の宿敵」 「『ロッキー4』を愛した者」だけでなく、「『ロッキー4』を 憎んだ者」にも感動を与える大傑作。

ロッキー4 炎の友情

 

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 僕と同世代の人は「ロッキー4」が大好きだ。これはほぼ間違っていないと思う。もっと言うと、当時中学生だった僕たち往年の映画ファンが「1」以外認めない姿勢に納得もいかず、でもスライのことが好きだから「1」を「面白さがよくわからないが、しようがなく」観ていた、という世代ではないだろうか。

 もちろん僕たちがおっさんになったときは、「1」は傑作だと思えるが、傑作とお気に入り、好物、思い入れとは違う。

今でも「ロッキー」と言えば、「4」なのだ。

 そんな僕にとって、「クリード」の続編がドラゴとの因縁の話になると聞いてこれこそ、「ロッキー」、「クリード」シリーズの最高の続編の設定であることは間違いない、と思った。

 気がかりなのは、「設定」だけで、「4」を軽んじるストーリーであったり、ライアン・クーグラーが今回は監督ではない、という点。

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「クリード 炎の宿敵」

 はっきり言おう。大傑作だ!!

 「クリード1」も面白かったが、それはやはり「アポロ」の息子とロッキーの師弟関係、というのと、次の世代につなぐことに失敗した「ロッキー5」と「ロッキー・ザ・ファイナル」のテーマゆえ、脇に回ってしまった「息子のリベンジ」がアポロの「息子」としてリベンジがなされていたことが大きい。

 だが、これだけでなく、アドニスのキャラクターがとっても良く迫力あるボックスシーンもあって、「1」は傑作となった。

 今作は、それからさらに泣かせどころを多く用意している。

 ロッキーシリーズからクリード2までの40年。これがすべて。それが、ここに集約されている。これだけで、十分傑作になる資格のあるバックボーンだが、本作の凄いところは、最も登場人物が多いくせに、今作ほど登場するキャラクターを端的に、多くを語らず、的確に描いてくれている点だ。オープニングの寒空から、いきなりのイワン・ドラゴの登場で、またその境遇が即座に分かる描写がたまらない。

 終始人物に寄ったカメラが少々ウザイと、最初は感じたが、それもキャラクターが多く出てくると、その理由が、その効果がしっかりと出てくる。

 イワンの息子のヴィクターが、全くドルフ・ラングレンに似ていないのは少し残念だが、強敵感は十分だ。そして、こいつが実にいい味を出してくれる。彼の戦う動機は「結局」家族のため。そして激闘の末、「父親のため」から「母親」のために変わっていく瞬間がとても悲しく、そして、この瞬間「勝敗」が決まる。

 

シンザン
シンザン

ブリジット・ニールセンの、「4」と変わらぬキャラが残酷で、そして最高だ。

 イワンは、そして「家族」を失わないために、ロッキーが「4」で出来なかったことを実行する。なんて残酷。そして、なんて愛のある行為。素晴らしい。

 彼らはまた絆を強くし、一緒にトレーニングを開始し、挑戦するのだろう。今度は敵討ちでもなく、恨みでもなく。

 本作の最大の泣かせどころはまさしくそこで、本作がシリーズ屈指の傑作となった瞬間である。
が、同時に、そっちで泣かせてくれたために、アドニスの結果に対する感動がすっぽりと、モノの見事に脇に追いやられるところが、本作の最大の欠点である。

最大の長所のシーンが最大の欠点のシーンになるなんて前代未聞だ。

 ほかにも見どころはある。設定は「4」だが、アドニスと奥さんの設定は、「2」を想起させるもので、ストーリー展開や、アドニスの「再戦」のための虎の穴での特訓は「3」のそれだ。脚本はスライほか共同脚本だが、ここまで盛りだくさん、でもきちんとキャラクターを描き切って、シリーズのファンをきっちり泣かせる。なんて奇跡だ。

 本作は、実は劇中のテーマが、ものの見事にこれまで「ロッキー」シリーズを見続けた者の、「ロッキー4」に対する様々な思いを持ってきた人たちに対するアンサーにもなっていることが凄い。本作は「ロッキー4」を愛した者にのみ感動を与えるものではなく、「ロッキー4」を憎んだ者にも感動を与えてくれる。

 これこそ、スライの生きざまそのもの。

 

追記

 演出も、序盤のロッキーの登場シーンなどなかなか心憎い。

 序盤のタイトル戦がどうも退屈な絵作りだなあ、と思ってたら、後の「ヴィクター戦」「再戦」で十分分かるのだが、あれは「ワザと」だ。ちゃんとそっちでは、クーグラーっぽい演出もあり、すごい迫力だ。

 今回のスライことロッキーは、前作ほどシーンにおいて、スポットは当たらず、オスカーにノミネートもされないだろう。だが本作のロッキーは、シリーズ最高の表情を見せる。

 特にイワンと会った時の表情と受け答えがアドニスに試合をする理由を聴くロッキーの表情が素晴らしい。これぞ40年ロッキーを演じたスライの頂点。

 もちろんアドニスのキャラクターも相変わらず楽しいし、演じるジョーダンの徹底した役作りも素晴らしい。

さいごに

 僕は実は本作でロッキーは死ぬのかと思っていた。次回作はおそらくそうなるかもしれないが、正直もう続編は不要、というまで本作は昇華した。

 戦う男たちが、家族に帰る瞬間を見届け、ロッキーは自分の人生にきっちり「ケリをつける」。

 邦題の「炎の宿敵」は、僕らの世代が付けたのかな、とは想像できる。だが、「炎」はニンマリして好きだけど、「宿敵」はテーマを狭めちゃうので、これはマイナスかな。「クリード2」で良かったかな。

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