・・・「薬物・ドラッグ」、「愚かな、バカなヤツ」、「やばい、かっこええヤツ」
「スターウォーズ」「クリード」を2015年の見納めだと言いながら、本作を来年に延ばさず、2015年中に観たのは、実は最初の1週間は先行上映ということを知り、ホームグラウンドの南町田で公開するということを知ったから。
映画はジャンルものが際立てば際立つほど、客層に違いが現れます。
チェーンを腰にジャラジャラと、FILAのパーカを着たお兄さんなど、まさしくジャンルな観客で席のほとんどを占めている。明らかに場違いなチェスターコートの僕はしずしずと席に沈む。
こういうの、楽しいねえ。こうでなきゃ!!
しかし、本編始まったら、やんややんやしてくれるのかと思ったら、なんと静かに鑑賞。ちょっと肩透かし。まあ、いいか。
N.W.A、Dr.Dre、Ice Cubeなど知らない人、ラップが嫌いな人はもとより、2時間30分、という長丁場にしり込みする人いるでしょう。
おそらくは、いわゆる「映画マニア」にとって、一番「遠い」映画。
だが、これだけは言えます。
いや、確かに2時間30分は長い。だが、登場人物らの出会いと別れと再出発をきっちり飽きることなく、ロドニー・キングの事件も絡め、時代も追いつつ、ギャングスタ・ラップの始まりから、ギャングものの緊張感と、ライブのカッコ良さ、3人の主人公の顔の良さ(本当に3人の顔がイイ!特にDr.Dre)など、とにかく見どころが多く、あっという間の150分。
普段映画を観なさそうなFILAの若者が食い入るように観ている!
本作、例によって、Based on a true story。実在したグループで、製作陣に本人のDr.DreとIce Cubeがいるので、自分たちに甘い自伝か、と想像してしまうが、全くそんなことはなく、いい意味でも悪い意味でも「Dope」。金をよこせと金属バットをぶちかますキューブはマジで怖い。ドレーも濡れ濡れパーティ三昧だった過去をきちんと見せる。
歩いているだけで、警官に呼び止められ、地べたに這いつくばされる。黒人とみれば、みんなギャングか?と怒りを詩にし、曲に乗せる。黒人警官も権力の犬と化し、ギャングは、黒人の少年を銃でマジで脅す。終盤の、自身で立ち上げたデス・ロウ・レコードを脱退するドレーとシュグのやり取りもとっても怖い。
だが、彼らも、ランチキパーティで気に入った女性の男に銃を向けるろくでなし。「F**K The Police」っておいおい、お前ら、そりゃそうだろ、お互いさまだろ?みたいな気もしますが、いや根は僕が思う以上に、遥かに深い。
彼らの文化、生き方に共感できるわけはなく、なんてすさまじいのだ、とただただ圧倒されるのみ。
もちろん、陽気な一面もちゃんと描いてある。
Eazy-Eの「Boyz’ n the Hood」のレコーディングシーンもすごい楽しいし、中盤袂を分けたキューブとN.W.Aの互いをラップでバトルする曲など笑ってしまうと同時に、ラップでディスるってことが、これほどCoolだと思い知らされる。ライブシーンももちろん、すごいかっこいい。
演者よく研究し、練習したんだろうなあ。
メンバーの一人の自業自得な結末なども、決してなあなあな描き方でなく、こういう仲間がいた、ということをきちんと描こうとしているところが、本作の素晴らしいところ。
さっきも言ったように、とにかく、一言「Dope」に溢れている映画なのだ。いきなり2016年のベスト1級の映画にぶち当たったかもしれない。
危険で楽しい中毒性のある、また見たいという欲求、それもまた「Dope」。
偏食な映画マニアにこの映画を紹介するとすれば、そうだね、スコセッシの「グッドフェローズ」みたいな感じって言えばいいかもしれない。
劇場公開日 2015年12月19日
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