劇場公開日 2004年10月30日
この人ほど過小評価されている役者は存在しないのだが、40年近く第一線で活躍した彼の代表作を挙げるのは難しい。
個人的には「求められたイメージの踏襲と別解釈」こそが彼の唯一無比の存在にしていると思っています。

マイケル・マンは「ラスト・オブ・モヒカン」が猛烈に好きだったのですが、それは僕がロマンチックな大学生だったからです。そのほかは「ヒート」というレジェンド共演作がありますが、他のマイケル・マン監督作品に印象深いモノは僕にはありません。
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トム・クルーズの役柄とルックスの違和感、それでも醸し出すクルーズらしさの天然さと、マンの匂い立つ夜景描写とストーリーそっちのけのロマン優先の絵作りと設定が混ざり合っていささか「濃いもの」になります。
そこにジェイミー・フォックスが緩急をつけます。
トム演じるヴィンセントに散々振り回されるのだが、こいつの言うことが一言一言がキモくて、それにマジでビビるのが、フォックス演じるマックス。
最初の仕事の後もさっさとマックスを殺せばいいのに、それはしない。
そう、この映画、この二人のやり取りがほしいからこその映画なのです。ほかの設定ははっきり言ってどうでもいい。ほかのつじつま合わせ、マックスの境遇、成長などどうでもいい。
トムも暗殺者に見えない仕事っぷりがマジですか?というぐらいザルです。
だが、トムの似合わない白髪頭とそれに真反対なまっすぐな瞳とキ〇〇イな言動がとにかく謎の男、と呼ぶにふさわしい、素晴らしい効果を見せています。
それは、ラストの逃走劇ではっきりします。
ヴィンセントは逃げるマックスの行く先をちゃんと迷わず、まかれることなく追跡する。これまでの得体のしれないヴィンセントという存在の見せ方の積み重ねが、ここで一気に爆発、昇華する。
トムがヴィンセントを演じるという違和感、彼らしさ、天然さを随所に生かしたキモさ、それこそがこの映画の吸引力。
そしてラストの明け方の電車。
匂うほどのマンのLAの夜景と、ヴィンセントとの一夜の終わりとともに映画は終わる。素晴らしいラストだ。トム・クルーズ一世一代の渾身の演技の終わりにふさわしい。
一方オープニングのヴィンセントとマックスが会うまでの昼間のLAの顔がとてもいい。マンの夜景信者はその意味をこの映画でかみしめるといいです。
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