小学生のころから、映画はたしなんできたくせに、どちらかと言うと、美術の点はダメダメでした。
モナリザの模写で、顔だけ「ついでにとんちんかん」にして先生に怒られたり、夏休みの宿題でシルヴェスター・スタローンの「コブラ」のLPジャケットをマジで書いて提出して、放り投げられた、という、スイートな思い出のある僕は、今も当時も変わらず、めんどくさいメンズだったわけですが、絵画ものには特別関心はないです。
本作の前評判をいろいろ聞くと、今年ベスト、または「アルゴ」を彷彿させる、など、すごい称賛の嵐、ということで、いや「アルゴ」自体は僕は全く評価していませんが、そういう映画、ということで、鑑賞することにしました。
タイトルは、まあ、世界的にかなりニュースになったので、そのネタバレ感自体は気になりません。
「SW」みたいなタイトルだね。
それはさておき、世界的絵画の、国からの個人の返還訴訟のため、ことは大きいが、当たり前だが、事実では、決着までに10年弱かかっている。
しかし、その年月の長さ、主人公の年齢、相棒の生活など、時間において発生しうるドラマは極力そぎ落とされ、本当に「ダイジェスト」なつくり。これを「手際よく」とみるか。
事実、ヘレン・ミレンの凛とした姿、美しく苦悩する姿が、「ダイジェスト感」を補ってあまりある演技が、その背景を雄弁に語っている、とは言えます。
しかし、いやいや、手際なんて要らないから、因縁ある祖国、捨てた家族、諦めと奮起、そして、心の決着、と「葛藤」と「心の安らぎ」こそが、この世界的訴訟の、本当のドラマ他ならないわけで、逆に言うと、ヘレン・ミレンでなければ、ここまで淡白な映画にはならなかっただろう、という気もします。
また、国外脱出の、若干「盛った」エピソードを入れるのであれば、主人公が途中現地でいやがらせをされたところをもっと悩ませたり、相棒の「それでも当たり前だが、【お金のため】という、きれいごとで済まない事実を描くなら、もっと苦労が欲しいと思います。
場面場面は大舞台なのに、展開が早いために、軽くみえる。
だが、すべては捨てたが、それでも裕福層の家系の話なので、その「佇まい」に泥臭い葛藤は不要と言えば不要だ。
そういう意味でヘレン・ミレンの、気品あふれる演技におんぶにだっこな映画でも全く問題はないです。
これを見て思い出したのが、「アルゴ」よりも、「アンタッチャブル」。この淡白さ、ダイジェスト感は、よく似ている。
そして、なんとなくみんな思っただろう、「タイタニック」。
凛とした老婦人とラストシーン。感動的であるし、これは狙ってやってるね。初めてのデートで映画を観る、という中年層(あえてここはその年齢層で)がいらっしゃるなら、猛烈にこの映画オススメします。
劇場公開日 2015年11月27日
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