「スカイフォール」をただの「ダークナイト」の「パ〇〇」としかみてない僕にとって、本作の注目点は多い。「スカイフォール」でのラストの仕切り直しにシリアス(笑)・ボンドの終焉を期待してのことだ。(詳しくは「スカイフォール」評にて)
何はさておき、まずはタイトルバック。
Sam Smithの主題歌決定から、半分本気で心配していたこととして、タイトルバックがメンズの裸にならなきゃいいんのだが、という懸念はとりあえずクリア。(いや、半分的中。。)
だが、意外と絵との絡みが悪い。Sam Smithには若さゆえ?色気と貫禄と遊び心が足らない、というところでしょうか。

やはり「天使の声」である。エロスの対極にあるともいえる。
メインタイトル・デザインのダニエル・クラインマンのこれまでの仕事からすると、その歌の色気のなさが影響したか、結果、彼の仕事の中では一番イマイチ、というのが僕の印象。実際絵作りも「The world is not enough」と「Die another day」から拾ってきた印象。

関係ないけど、ダニエル・クラインマン絡みだと、曲はSheryl Crowの「Tomorrow never dies」、絵だとTina Turnerの「Golden eye」がよい。
アバンタイトルについてだが、今回のアバンタイトルは、これまでのクレイグ007では一番いい。
何といっても、
「ボンドが街の祭りをすり抜け、連れの女を【ベッドに誘い込むまで】を長回しする」
というオープニング。

どうかしてる(笑)
しかし、この最高のアバンタイトルとタイトルバックのアンバランス感に若干不安を抱く。その不安は最後まですっきりすることなく、楽しいが、面白くない、という非常に「かわいそうな」形となった。

やっぱり作り手も、メンデスもクレイグボンドも生真面目すぎるような気がするね。
スパイ映画では、「ワイルドスピード」(もスパイ映画だと思います)、「MI:5」「キングスマン」と観てきましたが、やはりスパイものはストーリーで魅せる時代ではなくなってきたのだなと実感。
「ワイルドスピード」はクルマと肉弾戦、「キングスマン」はマシュー・ヴォーンのおふざけ、とそれぞれの持ち味でアピールしましたが、「MI:5」がトムのアクション、プラス「チーム戦」、さらにそこに「謎の女」という、従来の「007」の必須事項を持ってきたことで、スパイ映画戦では、一歩も二歩も先んじたと思います。
一方、本命「スぺクター」は本来の原点回帰を図っての「豪華さ」を持ちつつも、「お気楽」「女殺し」という従来の「007らしさ」をねらいつつも、十分に発揮できなかった点が決定的に痛い。
それは、「生真面目路線」ゆえの、「ボンドの内面なんざ、面白くないのに」、クレイグボンドの決着の脚本にこだわり過ぎたからだと思います。
「MI:5」が同じような題材、敵を用意しながら、テンションの持続を「謎の女」の存在にあてたことで、うまく「敵のつまらなさ」を回避できたというのに、「スペクター」は後手に回りかつ「定番」をうまく処理できない結果となった。
ましてや「M」や「Q」を現場に駆り立てるという、それすら「MI:5」の後手に回っているという結果。
ボンドガール、レア・セドゥは、初めから「底の知れた美女」で、ボンドも彼女も何のために世界中を飛び回っているのか、というと、列車はディナーを食べるため、敵と戦うため、「この後は?」(爆笑)のベッドイン(Sam Smith再登場でさらに爆笑)のためと、というギャグ路線。
高級車がローマの夜景をバックに走って、列車で生命の危機を感じた後は、即ベッドインして、敵のアジトで着替えたら、すぐ脱がされてと、オールドファンには大喜びの連続も、普通の映画ファンには、つまらない、とみるのは無理もないと思う。

それでも(それだから!)、僕は「スカイフォール」より好きだよ!!
劇場公開日 2015年12月4日
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