前回の第90回アカデミー賞はマイノリティ、ダイバーシティヨイショの極端な過敏反応のせいで、同人誌映画「シェイプ・オブ・ウォーター」が受賞しました。
もちろん前向きに見ると、「初の怪獣映画のオスカー受賞、イエイ!」といえなくもないですが、ただ単に、怪獣映画オタクが会員層の大部分を締め、「難しい」映画を理解できなくなったとも言えなくない。
そんなこんなの第91回アカデミー賞の結果はどうかと言うと、案の定の、会員があたかも全員一斉に集まって、消去法で決めたかのような、各部門の受賞結果。
もはや映画の内容、映画のデキには目を向けず、マイノリティ、ダイバーシティヨイショだけが選考理由。結果、あげるべき人にあげてないくせに「ダイバーシティ」だと主張する。
アカデミー賞は、業界人による、内輪の賞だが、もはやこんなの、もらって嬉しいの?というほどに、権威は失墜したと思う。
そんなことがなんだか見えたのが、この
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「既視感」というには、あまりにもベタ。ここで繰り広げられる物語は、表面上で起こったことしか見えない。というより、見せていない。想像力の欠如とでも言おうか、登場するキャラクターの背景が全くと言っていいほど、表面的。
脚本家の一人に、主人公の息子がいるからかもしれない。もちろん彼にとって父親である主人公は「ヒーロー」である。だがあまりにも物分りが良すぎる。都合の悪いことにはすべてふたをするように。
ドクに、「自分にしかデキないことをしろ」、というが、そんなキャラだったか?そもそもドクが天才なのは誰でもわかるかもしれないが、彼がそこまでドクに「仕事以上」に心を通わせるのがわからない。手紙?手紙の反応がトニーに戻ってきた描写はない。
plainとplaneのくだらない話はともかく、主人公の「美しい平原広がる南部ツアー」の結果が黒人と仲良くなっただけなのも、ロードムービーとしては物足りない。
ドクのほうも、全くと言っていいほど薄いキャラクター。
ちょっとだけホモネタ入れちゃう?とか、どうせ、そんなノリで作ったかのようにも見える。
南部に行く理由も、「勇気ある行動」で片付けられる。勇気を示す理由は何?そして、そもそも散々引っ張った兄貴の件はどうなったんだ?
つまり、こういう設定だったら、オスカー取れるでしょう?こういうシーン入れておけば、オスカー取れるでしょ?ということしか考えていないようにも見えてしまう。
「グリーンブック」というタイトルも、止まった場所に何かあるわけでもない。「グリーンブック」ってタイトルつけとくと、アイロニックな感じが出るでしょうみたいなノリだったんだろうが、全く機能していない。
クライマックスに、黒人で溢れるBARでドクの演奏するシーンが有る。トニーが黒人限定BARに入るところこそが、本当は一番ドラマなはずなのだが、そこはスルー。
トニーが黒人限定なBARに入る、これこそまさに「『逆』グリーンブック」。これで評価されるならまだ分かります。
唯一の笑いどころは、銃を実際に持っていたところだけ。だが、これだって相当やばい「ネタ」なのに、もっと高いレベルの笑いにまで昇華できたはずだ。
結果、黒人をダシにして、主人公がお金を稼いで、物分かりのいい性格になり、手紙を書くのが上手になりました、っていうだけの映画って僕なんかは思ってしまった。
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