アメリカ映画のホラーの定式として、へんぴな田舎の人間が実は殺人鬼だった、というものが多い。
テキサス州の仲良し屠殺一家「悪魔のいけにえ」。
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架空の場所ではあるが、田舎の湖畔クリスタルレイクでおなじみ「13日の金曜日」。
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核実験の被爆者が奇形の殺人ファミリーの「ヒルズ・ハブ・アイズ」。
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と、ホラー映画のモンスターはむしろ、アメリカン人の、「あまりにも広すぎる地形」と「州法」の違いからくる「違和感」、「恐怖感」をキャラクターに置き換えたようなものが多い。
というか、どんだけホラー好きだったのか、が今更ながらに気付く僕自身にも恐怖しています。
今回の「湾岸戦争帰り」の兵士が「モンスター」というのもアメリカのホラーの定式に則っている。
また舞台はデトロイト、という、なんともかつて自動車産業で栄えた街の成れの果ての過疎区が舞台であるのも時代を感じる。デトロイトでいうと、年頭の「イット・フォローズ」もそうでした。
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だが、老人の、デトロイトが舞台というと、やはり「グラン・トリノ」を思い出しますね。
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そう、これはホラー版「グラン・トリノ」。「過疎区」化した街の「貧しい」登場人物が繰り広げる恐怖の物語。
「息を止めろ」とは、まさしくその通りで、「ナーメテーター」相手が実は屈強の老人で、その盲目ゆえの聴覚に頼る行動や、やたらめったら切れる行動に、こちらも「だるまさんがころんだ」状態で息を止める緊迫感を楽しむことができる。
彼が手掛けたリメイク版「死霊のはらわた」で、オリジナルのギャグの部分を徹底して、大真面目に残虐描写に置き換え、でも取り憑かれた人間がヤク中だったというひねりもあり、リメイクという色眼鏡を外せば、とってもよくできたスプラッターに仕立て上げました。
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今回も「残虐性」と一捻りある「ストーリー展開」を楽しませてくれます。
陰影のあるリアルな映像と、打って変わってのファンタスティックな映像、恐怖を掻き立てる不穏な音響効果からの、「だるまさんがころんだ」状態の静寂の対比効果が素晴らしく、また効果的な長回しがのちのち活きる。
登場人物の紹介も簡潔でよく、また誰ひとり、感情移入できないもいい。
映像と音楽の間逆な表現効果と同様に、登場人物の「生きるか」「死ぬか」「殺すか」「逃すか」「盗むか」「捨てるか」の常に2択の選択肢を突きつけられながら展開していくのだが、こちらも、ガキどもを応援するか、ジジイを応援するか、の2択を常に迫られるのも素晴らしい。
「屈強」スティーブン・ラング演じる老人を最初は、甘え腐ったガキどもをぶち殺せ、ぶち殺せと観客を応援させながら、実はジジイはもっとヘンタイだった、というのもここで活きるのです。
ヘンタイを応援していた自分が悲しくなります(褒めてます)
老人の弱点を補うかのように、嗅覚とスピードが持ち味のワンコも大活躍。口臭そうなワンコでこちらも息を止めてしまいます。
報道では、侵入者としてガキどもが報じられる。つまり主人公ロッキーは、自分に従順な妹との「新生活」を選択する。
「最終的に」友達を金で売ったことになる。
ジジイの娘が死んだのは、「車」のせいであり、格差を想起させる、富豪の娘の運転であったり、ジジイの「ゲスいスポイト」といい、ラストの選択といい、なかなかテーマは盛りだくさん。
映像音響効果だけでなく、この素晴らしい脚本も手がけるフェデ・アルバレス監督。大注目です。
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