!!いつも以上にネタバレ注意です!!
この映画、序盤からずっと違和感を付きまとう。
主人公の身の落とし方が明らかに被害者のそれではないから。中盤のネタバレまで心持が悪いのは正しい感性だと後で気づく。
人を感動させる曲、というのを表現するのは難しい。その意味でこの映画は最もうまい方法で、それを演出していることにとりあえず評価。
はっきり言って、楽曲のレベルはそれほど高くない。歌詞は若者特有さでもあるが、アオい、ときている。
しかし、これには意味があるのだ。楽曲のレベルと歌詞のアオさは中盤のネタバレで納得させられる。このアオい歌詞にグラッとくるのが、またしてもアオい若者、ということも見逃してはいけない。
こんな青年に「あの曲よかったですよ!!」と言われると正直、困る、ってのはあるけど。
こういう楽曲を書く人間はちょっと。。。、と暗に示唆している。
だから、本作は、この青年の成長談でもある。
ラストに主人公が一人で事実を明かし、一人で歌うのも、「気持ち悪さ」を親である主人公が一身に受け止めた、ということでもあるのだ。
だがこの映画の欠点は、演出。
省略を引き算、と考えるのは早計で、描かない、という表現は足し算だ。事件の全貌も描かないのはあくまで、主人公の生き様しかこの映画は描くつもりがないわけだが、息子のしたことやその心情は、主人公たちが演奏する曲に少しずつ、しかし間違いなくエスカレートしなければ、主人公の到達する境地へはすんなりと共感できないと俺は思う。
もっというと、ラストの独演は「弾き語り」であるべきなのに、余計な音を入れ込んで感動させようとしている。序盤でアレンジでドライブ感を曲に与えていく、アレンジのマジックを描いている一方、アレンジで映画を殺してはいけない。
楽曲の青さはそれでいい、むしろそうあるべき話だ。
主人公が音楽好き、広告マンという誰が見ても憧れるおやじ。息子とはうまくいっているようもあった。しかし、そうではなかった。結局、何をどう考えても仕方ないんだよね。
だからこそラストの弾き語りは、余計な音は入れてほしくなかった。受け止めるは観客自身のそれぞれの思い。
劇場公開日2015年2月21日
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