「ブルックリン」 見た目はオサレムービー、中身は「故郷」を棄てて「故郷」をまとった硬派な移民賛歌。

「ブルックリン」
劇場公開日 2016年7月1日

 

シアーシャ・ローナン。

「つぐない」で衝撃的なオスカー助演賞ノミニーから、アイドル・モレッツとは違う「演技派美少女」だった彼女。そんな彼女の、これぞ「今の彼女しか演じられない」ファン必見の映画がやってきた。

ただしファン必見といえども、明らかに見た目はオサレムービーである。

 

「ブルックリン」

 

アイルランド人の両親から生まれ、アイルランドで育ったシアーシャと主人公エイリシュは当然ダブる。そういった事情よりも、20歳を超えたばかりとはとても思えないルックスに大いにショックを受けることだろう。

だが、そんな雑音をよそに、シアーシャは本作で実にいろんな顔を見せる。

実際、その顔と同じように、劇中のエイリシュはどんだけ服を持っているのか、というぐらい、非現実的にファッショナブルに衣替えする。これこそオサレムービーである。観客の中には、1人で観に来ている女の子も多くいた。

また、この物語はお上りさんな女子は必見である。

アイルランドからブルックリンに来た当初に頻繁に来ていたグリーンのコートやカーディガンは、エイリシュが都会生活に慣れるにつれ、着なくなる。久々の帰省には、思いっきり「都会っ子」を演じる姿には100人中100人が納得することだろう。

 

女の子はもう、「ワカルゥ、ワカルワァ」。

 

洗練された姿と大学で学んだ知識でもてはやされるエイリシュだが、結局故郷を棄てる。故郷を再度「離れる」理由は、おいおい、そりゃ、あなたが悪い、というもの。主人公エイリシュの、最初に故郷を棄てた理由と、再度故郷を「離れた」理由は大いに今のアイルランドが怒るような描写だが、この映画、アイルランド合作。

つまり、あくまで「祖国」を捨て新天地でアイルランド人の第2の故郷を作り上げた移民たちへの賛歌。

エイリシュは、姉や母と友達を暮らしたアイルランドを胸に、ラスト、「『アイルランド』を象徴する」、グリーンのカーディガンで、実にオトナなリラックスした姿で締める。

 

そこは本作最も美しい、輝いたシアーシャがいます。

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