「はじまりのうた」涙をかみ殺せ

キーラ・ナイトレイ

原題「Begin Again」

 このテイラー・スウィフトな原題とBegin Againなシチュエーションなんか全く縁のなさそうなキーラ・ナイトレイのイメージ。

 しかし、これが実にいいんです。

 彼氏アダム・レヴィーンに新曲を聞かされ、表情がみるみるかわるなり、くそビンタ。今のレヴィーンにビンタできる女は確かにキーラしかいないんじゃないか、と思わせるほど、説得力があります。

 本作、音楽映画としての風貌ではあるが、実は音楽で成功するとか、路上でアルバムをつくるとか、そういう部分は結構描いてなかったり、割と適当だったりする。

 つまり、体はファンタジー。

 この辺を映画的に欠点とみることもあるかもしれないが、これはもう作り手が、意図的に、キーラのかわいいところ、かっこいいところ、咬みつくところしか興味がない、ぐらい、キーラ萌え。

 そのスタンスなので、リアリティは全く必要ありません。

 もちろん、それなりにバランスも配慮し、ラファロの娘の参戦には、それなりにシンプルなガールズポップで楽しませてくれたり、最近のレヴィーンの匂って来るような歌声とアレンジを半分自虐的に笑いに結び付けたりと、なかなか楽しい。

 特にイヤホン分配器での、互いのお気にいりのプレイリスト公開と互いの音楽談義とダンス、といささか中学生のノリのアオいドリームを照れも臆面もなくやってくれるところがいさぎよくって、ほっこりする。

ちゃんと「オトナ」

それだけだったら、中学生なのだが、ラストの、キーラの、ラファロを、まさに噛み切り殺しそうなあのまなざしと、エピローグの分配器。

 ここまでヒロインにヤラレてしまったのはホント久しぶりです。ラストのチャリンコ姿や、エピローグの内容からして、これ、続編イケるんじゃない?

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