「スリー・ビルボード」
劇場公開日2018年2月1日
!!!!激しくネタバレしています!!!!
完璧だ。
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この年のアカデミーは、この大傑作の監督、マーティン・マクドナーを候補から外すという結果。まったく何考えてんでしょうね。
その演出力は、前作「セブン・サイコパス」の収拾がつかなくなったクエンティン・タランティーノのバッタもののイメージから一転。本作でタランティーノ以上に人が描けることを証明し、デヴィッド・リンチ以上にわかりやすい映画に仕上げた。
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それは、フォーマットが西部劇であり、アメリカの田舎町での珍事、という「ツインピークス」を彷彿させます。
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「スリー・ビルボード」
本作の登場人物は常に対比の関係を持っている。親子、夫婦、黒人。白人、小人、ホモ。イカレた元軍人。
すべて何らかの形で「異形の存在」。そう、それこそが、アメリカ。
「そもそも、お前ら自身が異形の存在じゃねえか、なにを国外で、国内で、街中で、身内でバカな争いをしてんだよ(笑←これ重要)」
これこそが、マクドナー監督のメッセージでしょう。
それを皮肉たっぷりに、でも愛すべき「西部劇」のフォーマットに乗せて、「愛すべきキャラクター」として登場人物を描いているのです。
「どうせお前たちはそうなんだろ?だったら、いっそいくところまで行っちゃえよ。」
本作は主人公二人の「成長」のストーリーでは決してない。彼らは行きつくところまで行き、足を止めたのに、最後の最期でも間違った行動を起こす。
だが、ラスト、その道中の一言が本作の、最も重要なセリフなのだ。
なんだか気乗りがしない。でもまあ、みちみち考えてみようか。
このすこし前までの、執着と諦めの分岐点。人は簡単に転ぶ。また人が転ぶのは、これまでそうと思っていなかった人物の言葉によったりすることもある。
身勝手に自殺した(これはあまりにずるい行為だし、実際そのようにコミカルに描かれていた)署長の手紙に、大好きな曲の影響もあり、簡単に転ぶディクソン。ちょうとその裏では、最も怒りがMAXにおよび明らかに常軌を逸した行為となったミルドレッド。
行き過ぎた感情の爆発による警察署の放火のなかで、改心している奴がいるというブラックな笑いの構図。
あんなに差別的なディクソンの母親もとてもいい。ディクソンがああ育ったのはこの母親のせいだが、ディクソンの支えになっているのもこの女なのだ。ソファーで眠る母親に赤い照明は、デヴィッド・リンチの映画のよう。
だが、その感情はリンチとは違い、とても穏やかだ。ナイス親子!!
誰もが、自分勝手、だが誰もが愛され、そして、大事にしている人がいる。でもつまんないことで転び、つまんないことに改心させられる。
これって外から見たアメリカのことでもあるのだが、実は僕たち自身であったりするんだよね。
本作は常に、怒りと笑いが寄り添う。それすなわち、執着と諦めの関係と密接に関わっており、それが本作の味わいとなっている。
声高に負の連鎖とか、赦しとか、じゃなくって、その先にあるものがこの映画の在り方なんだと思う。
映画で使われる楽曲が、字幕なしになったのは本当にイタイ。何とかしてほしい。最近の映画は本当に楽曲はセリフなのです。
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