「ロウ」を作ってさっさと死ねばよかったのに、と揶揄されたのはデヴィッド・ボウイだが、シルヴェスター・スタローンはいつ死ねばよかったのだろうか?
本作はまさしく、80年代という時代に抱かれ散った男たちの映画である。
監督:ジョルジュ・P・コスマトス。言わずとしれた「ランボー怒りの脱出」の監督。
製作:キャノン・フィルムズ。言わずとしれた80年代一世風靡したプロダクション。
主演:シルヴェスター・スタローン。言わずと知れた名優。
80年代、彼らは輝いていた。
さすがに「ロウ」と一緒にするわけにはいかないが、サントラは「ロッキー3」から始めた安バンドの叩き売りが「ロッキー4」で爆発し、より推し進めたMTV感覚のサントラ商法も今回もまずまずのデキ。
その頂点が、「オーバー・ザ・トップ」のサントラ、ということになるのだろう。
みんなはシルヴェスター・スタローンは「ロッキー」や「ランボー」の人って言うかもしれないけれど、僕はむしろ、「80年代は向かう所敵なしだった人」、という印象。ジョニー・デップなんて80年代のスライに比べるべくも無い。
そんな向かう所敵なしの彼が、「怒りの脱出」で大ヒットを飛ばした勢いで「ナイトホークス」でやった刑事役を再び演じた。
キャスト陣、そしてポスターの「crime is a disease meet the cure」からもこれはスライ版「ダーティ・ハリー」。
そのデキはまさしく80年代そのもののスタローンの味そのものが凝縮した映画となった。
「怒りの脱出」「ロッキー4」で培った、当時(あくまで当時)スタイリッシュな映像とスライ演じるマリオン・コブレッティの野暮い風貌のマッチング。
そして女房のとんでもないプロポーションを前面に打ち出した良く分からないロボットとの競演。
(スライ、うれしくて仕方なかったんだろうなあ。)
とにかく「男前に見える」シルヴェスター・スタローンがここにいる。
役作りも抜かりない。ランボーよりしゃべるし、ロッキーより聞きづらくない。
コスマトスの演出もスタローンの思いに応えたかのように「怒りの脱出」以上にスピーディ。ちゃっちゃと終わらせる上映時間。
彼らは時代の求める映画を彼らの持てる力で作り上げた。そのデキは間違いなく彼らの思いの通りの映画になっていたはずだ。間違いなくイケてたはずだ。続編が出来なかったのは、きっとブリジットのせいに違いない。
「オーバー・ザ・トップ」以降急激にアーノルドの「ゴリラ」「レッドブル」に押され、尻すぼみになったスタローン。途中「コップランド」という佳作があったが、80年代の彼は確かに時代に抱かれに抱かれ、捨てられたのだ。
しかしそれでも僕は彼を追っていった。
そして「ロッキー・ザ・ファイナル」「ランボー最後の戦場」を境に、彼は鼻息荒く「エクスペンダブルズ」を作った。デキは全く残念なモノだが、僕はそれでもこれからの活躍を期待している。
僕たちはまだまだスタローンを死なせない。
(記事は2012年のモノです)
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